昔から母校の歯科大学では「歯医者で 銀歯と称して受信機を埋め込まれ、それ以来耳の奥から宇宙からの声が聞こえるようになった。さらわれてしまうかもしれないから外してほしい」と訴える患者さんが来られる、という話がまことしやかに言い伝えられていました。初めて聞いたときは「銀歯が原因でキャトルミューティレーション?またまたぁ、都市伝説なんじゃないの?」と思ったものです。で、最終的には精神疾患として治療をされることになったという話でした。
銀歯が原因でキャトられる?
大学を卒業して他大学出身の友達がたくさんできると「うちにも来られてた」「僕も診たことある」という話が続々出てきて、どこの大学にも、複数名来られてるんだ、ということに気付きました。その時は、共通の症状を呈しているので何らかの形で妄想や幻視幻聴の症状が共有されているんだろうなと思いました。
共有される妄想
「妄想を持つ人との付き合い方:困っている人々を助けるために」
それから何年もたったある日、何気なくテレビを見ていると「ガードレールから人の声がする」という謎を追っていて、調査の結果どうやら金属が一定の条件を満たすとAM ラジオの受信機として働き、音を発するという結論に到達していたのです。
それを見た私は「あ!」と思いましたよ。
「銀歯が受信して人の声が聞こえるのって、これなんじゃない?」
調べてみると組成の違う金属同士が一定の条件を満たして触れ合うことで AMラジオ受信(FMはダメらしい)するという現象は原理的には十分起こりうるという話も出てきて「まことしやかな都市伝説」どころか普通に起こりうることなのかもしれません。そのことを歯科関係の友人に話すと「えー!じゃあ、あれは妄想、幻聴じゃなかったのかもね」と一様に驚いていました。
私たち医療関係者は自分たちに理解不能な訴えがあると「気のせい」とか「精神的なもの」とかで片付けてしまいがちですが、ちゃんとした原因があったりする事が多いのかもしれません。早速、国内外の論文を当たってみたのですが、うまくヒットしませんでした。今、歯科大学を訪れる電波受信の患者さん、今でも精神科とか心療内科とかに送られているのかしら?こんなにあちこちの大学病院でみられる症状だったら誰か研究してくれないかな?(大学のえらい先生~よろしく)
もし、うちの医院に来られたら紹介する前に、いっぺん金属を除去してみよう。
今回、役所から個人ブログまでありとあらゆる媒体で使用されている「いらすとや」さんのイラストを使わせていただきましたが、イラスト屋さんのイラストの中で一番キテるのはこれだと思います。まあいっぺん見たってください。