昨日大阪市では大阪都構想に関する住民投票がありました。全国の皆さんからご覧になると、何が問われているのかさっぱり分からなかったかもしれませんね。大阪の人のFacebookやTwitterへの投稿を見ていても、論点があまり分かっていない人が少なからずいたようです。そこで、大阪市民じゃないから投票には行けないけど、無関係ではない大阪府民の私から、何が争われていたのかをざっくり説明させていただきます。
メインテーマはお金
争点は色々あげられていましたが、結局メインテーマはお金これにつきるでしょう。高齢者が増え、労働者が減り、経済が縮小する中で、いかにしてお年寄りの年金と医療費を負担しつつ、他のサービスも継続させていくか?もうね、これは大阪だけじゃなく日本の政治そのもののメインテーマなんです。
で、あげられた案は大阪府と市を廃止して大阪都を作って
●府と市で重複してる部分のムダを省く
●都になることで税収を直接握る
ということでした。
ちなみに橋下氏が知事時代に大阪府の財政健全化を推進したときにも、医療を含めた各種行政サービスのコストを削減しましたので、都になったらもっと厳しく大なたを振るってくるでしょう。(だってそのために都にするわけですから)
大阪市で特に負担になっているのは生活保護費と医療・介護費です。生活保護受給率は全国1.5%なのに、大阪市5.3%とダントツに多いのです。(H22年 大阪市Webサイトより)このままでは本当に必要な人に支給する財源がなくなってしまいます。今回このあたりは詳しくは申しません。
医療については、予算総額は3兆9,354億円に対して医療や介護に5945億円かかります。高齢者の人口がどんどん増えるので削減は難しいでしょうけど、少しでも増加を抑えたいところです。(H23年データ 大阪市Webサイトより)
歯科医師会や医師会を通じて「反対に投票しましょう」というポスターが配布されていました。まあ、これは当然の流れで、自分たちの業界への予算が押さえ込まれる可能性が高い改革にホイホイ賛成するなんてことはしないからです。ちなみに河内長野の当院にも来てました。大阪市から通ってこられる方もいらっしゃいますからね。
結果は?
で、投票が終わって開票されると結局は大阪都をつくるのに反対という結果が出ました。投票の結果を地図に色分けした人がいますので、その画像をお借りします。青いところが賛成の多かった地区です。北部の市が中心になって改革に賛成していますね。この地区の共通点は何でしょう。
(ハフィントンポストより)
それは、ある画像と比べるとよく分かります。上下に並べてみましょう。
そう、若い世代が多い地区なんです。
要するにお金を巡る世代間闘争だった
そういえば、テレビのインタビューでも
高齢者「反対、サービスが低下するから」
子持ちのお母さん「賛成、子供にツケを回すわけにはいかない」
みたいな事を言ってましたが、まさにそれがこの地図に現れているわけです。
先ほど「大阪だけじゃなく日本の政治そのもののメインテーマなんです。」と書きましたが、だからこそ「この選挙が国政にも影響を与える」と言われていたんですね。
つまり、この投票は市民(国民)が
1.自分が受けるサービスが低下することを受け入れて、年金や医療の制度が後の代まで続くようにする。(賛成派)
2.次の世代はどうなっても良いので、今のサービスを維持して受給しまくって逃げ切る。(反対派)
のどっちを選ぶんですか?という問いだったわけです。で、このたび2を選んだわけです。「高齢社会に対して、国民が次世代のために私欲を捨てて自制心を持って振る舞えるんじゃないか?」という期待は持てないことがこれで明らかになりました。これで2を選んじゃうようだったら、もうどうしようもない、ということで橋下氏も政治から手を引く運びとなったわけです。気持ち分かります。
この後どうなるのか分かりませんが、少なくとも私個人としては悠々自適の年金暮らしというのは期待せず、無駄遣いを減らして地道にコツコツ備えていかなければいけないな、と思いました。あと、病気で長患いしないように体の管理と。そのためにはやっぱり歯をちゃんとしておく必要がありますね(宣伝ではなく本気で)。今の子供たちの負担を少しでも減らさなければいけません。
次の世代の若い人ってもともと人数少ない上に「年金なんてまだまだ先だし」とか思ってて投票に行かない人もいるじゃないですか?ところが高齢者といえば人数も多いし、時間があるから投票に行きやすいし、投票に行くこと自体に慣れてるし、今まさに手にしているものを取り上げられるとなれば必死になるしで、30~50代の中年層が若い世代の肩を持たなければ、おのずと2が選ばれてしまうわけです。
後知恵ですが、この投票、母親世代の女性を巻き込むことができていたら勝っていたんじゃないかと思います。母たるもの、後年子供が地獄を見るような選択はしないものです。でも、慰安婦の発言があったため、多くの女性が橋下氏の言葉に、はなから耳を貸さないという状況があったように思います。政治家の人を見ていると、一言の失言が命を取る事があまりにも多く、口は災いの門という事を痛感する次第です。歯医者としては口は幸せの門であってほしいものです。とこぎれいに片付けたところで本日はこれにて。