河内長野市の歯医者・歯科医院 ふくしげ歯科 千代田駅徒歩10分 歯周内科(歯周病治療)

ふくしげ歯科
〒586-0006 大阪府河内長野市松ケ丘中町1290-1
コノミヤ河内長野店 2階

「むし歯を治す歯磨き粉を発見!?」このノーベル賞級とおぼしき発見がマスコミで大々的に取り上げられないのも歯科界の陰謀なの?!

2014.07.07
カテゴリー:

「虫歯を治す歯磨き粉を発明!?」日本人女性歯科医はノーベル賞受賞間違いなし!!??

昨日FacebookのTLに上記のエントリーが流れてきました。「こんなに凄い発表なのにマスコミで取り上げられず、騒ぎにならないって事は今度こそ本物の歯科界の陰謀なのか!?」と書かれていましたので詳しい調査に乗り出しました。
キリッ( ̄^ ̄)ゞ

元論文はここです。おお、さすが審美系の先生なだけあってお美しい。

スクリーンショット 2014-07-06 17.27.04

この発表の要点は・・・・

・エナメル質という歯の表面の一番硬い部分だけにできた、ごく小さなむし歯(初期虫歯と呼びます)は元々フッ素やキシリトールガムで再石灰化を促すことで治そういうのが最近のやり方です。この発表はその一つの方法に関するものである。
・上記の再石灰化させる代表的な物質の一つであるリン酸酸性フッ素溶液(APF)で初期虫歯を再石灰化させた場合、元々のエナメル質の構造(六角形の結晶構造)とは違う構造でカルシウムが沈着し、元のエナメル質と再石灰化した部分との間を顕微鏡で観察すると明らかにくっきりとした境目が存在する。
・この先生が開発したペーストを用いて再石灰化させると、エナメル質と再石灰化した部分との間には顕微鏡で見ても境目が見られず、再石灰化した部分があたかももともとエナメル質だったかのような六角柱の結晶構造になっている
・大きな穴が開いたむし歯を治す物質を発見したのではない。

要するに「微細なむし歯を修復効果のある歯磨き粉の、顕微鏡で見ても見分けがつかないぐらいきれいに修復できるバージョンが出ましたよ」って事だったわけですね。これ自体素晴らしい事だと思いますが、皆さんがイメージする「穴がほげたむし歯にペースト塗ったらガッツリ穴がふさがったよ」みたいなものではないんです。だからマスコミでも騒ぎにならなかったわけです。そらそうと「ほげる」って方言だけど感じ出てますよね。

ちなみに冒頭のブログの筆者である桑満先生も書かれているように、この発表は投稿されている場所がネイチャーのBrief Communications欄であることから、速報や短報といった位置づけのものになります。本格的に査読(科学雑誌に掲載するかの審査)を受けて掲載される正式版のものではなさそうですが、編集者による審査はちゃんと受けている模様です。凄いですね。
ネイチャーの投稿要項

エナメル質を再石灰化させるものの多いことといったら!

実はエナメル質がちょびっとだけ溶けた初期虫歯を修復する(修復を補助する)物質はたくさんありまして、代表的なものを以下に挙げてみます。

■フッ化ナトリウム(ベーシックなフッ化物。歯磨き粉に入っている)
■フッ化リン酸ナトリウム(ベーシックをより染み込みやすい調合にしたもの)
■フッ化第一スズ(ちょっと茶渋みたいなのがつくけど効果の高いフッ化物)
■フッ化ジアミン銀(歯医者で塗る苦くてお歯黒みたいになる。サホライドという名前)
■リン酸酸性フッ素溶液(APF)(歯医者で塗られるまずくて酸っぱいフッ素はこれ。)
■キシリトール(キシリトール自体には再石灰化する力はないが、唾液の分泌を促進し再石灰化を促す。また虫歯菌を兵糧攻めにする働きがあり、継続して食べると虫歯菌の数が減る。)
■POs-Ca(ポスカ/リン酸化オリゴ糖カルシウム グリコが特許を持っていて様々な製品に配合されている。再石灰化させる力が強い。トクホ)

●ハイドロキシアパタイト(エナメル質のカルシウム成分の名前 特別な加工を施したものは歯に沈着して再石灰化させる)

そして最後にご紹介するのは、天然の再石灰化のお薬である

■唾液(カルシウム分を含みいつも歯を修復し続けてくれている)

唾液よ、君は何と素晴らしいのだ!

無加糖の水やお茶以外のものは、食べる度にお口の中のいや細菌によって分解され酸が発生します、そのため、何かを1口飲食するたびに必ず1~2時間歯が溶けるのです。その様子をグラフにしたものをステファン・カーブといいます。

1
ステファンカーブ

このグラフは、食べる度にお口の中が酸性に傾き歯が溶けるという様子を表しています。グラフが下に下がると酸性で、赤い色に塗られている時間は歯が溶けている時間です。ものを食べるとほぼ必ず酸性に傾きます。すると歯の表面が少しだけ溶けます。しばらく食べずにいると、口の中に唾液が行き渡ります。唾液は酸を洗い流し、酸を中和し、ばい菌を殺菌し、カルシウム分で溶けてしまった歯を修復してくれます。このように唾液はずーっと歯を守ろうとしてそこにスタンバイしているのです。

とはいえ、口を空っぽにして歯を唾液で浸したにしてあげないと、このような素晴らしい作用の恩恵を受けられないのです。そして何度も繰り返し、飲食している下のグラフは赤い面積が非常に多くなっていると思います。これはしょっちゅう歯が溶け続け、修復する暇を与えていないこと意味します。だらだら食べや、ちょこちょこ食べは歯に悪いですよ、と言っているのはこのためです。

初期虫歯は口が空っぽの時にこっそりと唾液が自然治癒させているのです!!

唾液って本当に素晴らしい!ビバ唾液!

というわけで、今回こそ重要な発表を握りつぶす陰謀か!?と疑われましたが、またもやそうではなかったようです。

業界の者として感じるのは、歯医者の先生って大抵「歯の削りすぎで右肩下がりの側湾症になってて、細かい物の見過ぎで目がしょぼしょぼしてる職人さん」っていうイメージで(ま、自分もそうなんですけど)

そんなに強大な隠然たる力なんて持ってませんから!

こちらからは以上です。(^w^)

bnr_recruit