河内長野市の歯医者・歯科医院 ふくしげ歯科 千代田駅徒歩10分 歯周内科(歯周病治療)

ふくしげ歯科
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コノミヤ河内長野店 2階

「病院の長い待ち時間にしびれを切らす人々」と「病院の予約制がうまく回らない事情」

2014.07.08
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コメダの卵はホカホカでおいしいなぁ、と思いつつこのエントリーを書いております。冷たいゆで卵の10倍美味しい・・・・幸せです。シロノワールのことをシロノザウルスと言ったオッチョコチョイの事を私はいつまでも忘れません。

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さて、本日は以下のような意見に関して、いつも感じていることがありますので、それを書きます。

社会通念から外れた病院経営について。 ‐雑感‐(脇田 栄一) – BLOGOS(ブロゴス)

医師なんて医療業界という狭い世界で生きており、世間知らずが本当に多い。(初対面でタメ口など) ここでいう世間とは、時間やルールに守られた社会秩序であり、何よりそれが優先されなくてはならない、という社会構図。大きな病院に患者が殺到するのは当然の事と受け止められるが、予約の時間を設けるならば、30分に2人まで、なんていう時間制限が必要になる。人数制限を設けていながら、時間がずれ込むのであれば、それを調整するのは病院側の責任であり、患者の責任ではない。

たとえば、以前、ホリエモンなんかに予約時間ピッタリでいったのに1時間以上待たされた (怒)というような事態が発生したようで、ちょっとした話題になっていた。自分も(足を怪我してから)通院するようになり、同じ状況に見舞われた事は、(彼が発言する前より)数知れず。そらーもうカンカンに怒りましたよ。彼(ホリエモン)の意見はよく分かる。何のための予約かと。

新設の病院や商業優先の病院経営では、時間予約は建前でしかない。自分も当然、その後のスケジュールがあるので、病院側の杜撰な段取りによって、迷惑千万というか大きく損害を受ける時がある。これを主治医に訴えたりした時には、「うちは患者が多いのでね」「待ってもらうしかない」(医師)と反省皆無、見当外れの傲慢回答をもらった事がある。「診てやっている」といった潜在意識がそのまま言葉になるようだ。

この問題ですが、昔から繰り返し話題になっています。この記事を書かれた方は金融アナリストだからなのか、患者を待たせるのは商業主義、金儲けが目的だと断じておられます。確かにそういう側面もありますが、それ以外の視点もあるというところを書いてみたいと思います。

ずっと前に、神戸大学の岩田健太郎医師が下記のエントリーを書かれています。

「本当に」医者に殺されない47の心得 [心得27] 待ち時間は、患者が(も)悪い

まずはデータです。

日本では医療を提供する側の医者の数は少なくて、人口千人あたりの医師数は2.2人。(どうでも良いけどギリシャの6.1人って一体・・・・)1930

日本の人口一人あたりの外来受診数は13.2件(2009年)で、OECD加盟国ダントツのトップ。(OECDの平均値が6.5)

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この岩田医師のブログエントリーの主張は、待ち時間が長くなってしまう原因は、限られた資源である医療インフラの無駄遣いである、というものです。

●そもそも日本の人口あたり医師数はOECD諸国の中でも最低ラインに近い数しかいないから病院が混む。(上のグラフ)

●国民は、医療へのアクセスが良好なため、放っておけば治る単なる風邪やちょっとした腹痛などで、ばんばん医療機関を利用するからなおのこと混む。(下のグラフ)ここでは直接言及していませんが別のエントリーで、ちょっとした病気で地域の中核大病院を利用する事もやめるべきだと書いてらっしゃいます。これに関してはこのニュースをどうぞ。

●医者のほうにも問題はあって長時間労働に慣れきってしまい「時間というコスト感覚」の絶望的な欠如がある。

●無駄な検査が多すぎる。

つまり、要は国の構造として混む仕組みになっているってことですね。金儲け主義というよりはインフラとして不足気味であるということです。もちろん医師数を増やすのは良い解決策だとおもいますが、彼らを養って行くには莫大なお金が掛かり、国全体で負担しなければなりません。まずは、それ以外の方法で効率化を図っていきたいものです。

ちなみに、脇田氏の提案されている

「予約の時間を設けるならば、30分に2人まで、なんていう時間制限が必要になる。」

を実際に行った場合どうなるかというと、ちゃんと実例があるのです。それはイギリスの医療制度です。現地に留学していたお医者さんから聞いた話ですが、イギリスでは近所の家庭医が最初に相談する窓口になっていて、大病院の専門医の診察を受けるには紹介してもらう必要があります。たとえ症状があっても専門医の順番が回ってくるのに数ヶ月待ちは当たり前だそうです。MRIの撮影なんかもよっぽどのことがなければ滅多にやってもらえず、申し込んでも撮ってもらえるまでに何ヶ月も待つそうです。急ぐ人は全面的に自費治療にすれば、待たされずに受診できるようですが、後日気が遠くなるような数字の記入された請求書が届くことになります。不思議なことにそれほど医療へのアクセスが制限されているにもかかわらず、イギリス人の医療に対する満足度は日本人のそれをはるかに上回っているそうです。何か学ぶべき点があるのかも知れません。

いずれにせよ、医療インフラは整備するのに莫大なお金が掛かりますので、どの国も有り余るほどは用意できません。ぎりぎりのキャパで運用する運命にありますのでどこかで何かを我慢する必要があります。

1.当日数時間待つ

2.受診日や検査日を数ヶ月待つ

3.莫大な費用を払う

4.メチャクチャ重症な時以外は受診できない決まりにする

の4択になるわけです。このうちどれが良いか、一度ご自身で考えてみてください。

 

医師の時間は国民みんなの貴重品

病院の設備そのものやコメディカル(医師以外の医療従事者)も同様ですが、今回は分かりやすいので医師を例に書きます。

医師というのは、個人でありながら同時に国の貴重な財産です。彼らは青春をかけて勉強し、研修医終える頃には10年の月日が流れています。もうね、女の子なんてその頃にはクリスマスイブなどとっくに過ぎちゃってるわけです。そしてその後、中堅の域に達するにはさらに10年の修行の日々が必要です。

皆さんはこの有名なピカソの話を聞いたことがあるでしょう。

レストランでピカソがある女性に「お金は払いますから」と頼まれて30秒ほどでナプキンにさっと絵を描き上げました。ピカソ1万ドルを請求ました。その女性は「30秒ぐらいで描いたものが1万ドル?!」と驚きましたが。「いや、40年と30秒だよ」と答えました。ピカソの画家歴は40年だったのです。

というものです。「いい話」などでよく回ってくるものですよね。真偽のほどははっきりしませんが、その内容は実に示唆に富んでいます。

中堅ドクターが5分程度の診察で、患者さんにいくつか質問をし、その答えを聞くだけであまたある病名の中から、幾つかに候補を絞る、という一見当たり前の診療風景。この密かなる神業にはまさに20年と5分の価値があるのです。その貴重品をみんなで大切に使わなければならない、というわけです。

で、最初のブログエントリーの解決策は?

待つのが嫌いな私も昔、予約制じゃない美容院に行っていた事があります。朝15分前に行くと既に3人先客があり、夕方出直さなければならず、髪切るだけなのに1日仕事でした。女性だから3週間に一度は行きますので正直これはつらい。しかし、この美容院は腕が良いので改善しなくてもお客が来るため、ずっとそのままです。で、結局は時間が大事なので予約制のところに移りました。でも、これはその美容院が悪いというわけではありません。私に合わなかっただけなので、文句を言わず黙って予約制のところに行けば良いだけのことです。

医療業界で問題なのは、選択肢がほとんど無いということです。先ほどの選択肢で言えば「1.当日数時間待つ」だけなんですね。特に大病院はどこも同じようなもんです。都市周辺ののどかなこのあたりでも近隣の規模の大きな総合病院に初診で行くとなると、8時台に整理券をもらい、診てもらえるのは午後1時なんて事になっちゃいます。これは忙しい人にはつらいですよね。

世間では、人の命を預かる航空会社においても、エコノミーのお客さんはとにかく安く移動できることを主眼に置いていますし、ファーストやビジネスのお客さんは、機内乗り込み、荷物受け取り、機内での時間の充実(休息や仕事)など時間を大切にしています。世の中には2種類の人がいます。それは「お金が大事な人」と「時間が大事な人」です。今の日本の医療には「時間が大事な人」に提供するサービスが欠けているのです。日本も成熟社会になって久しいのですから、そろそろ医療にもそういった多様なサービスが出てくるべき頃合いなのではないでしょうか。日本の国に働き口や付加価値を作り出してくれる優秀なビジネスマンの時間だって国にとっては貴重品なのですから、大事にしてあげないといけません。

ただ、現在の制度で問題なのは、医療保険を使いつつ、待たされないための代金(ファーストトラック代)を保険外で受け取ると「混合診療」というルール違反になってしまう可能性があることです。

・ファーストトラック代を払うなら全ての治療が保険外になる

・保険使いたければ誰でも確実に長時間待たされる

この2択しかないわけです。ちょっと極端すぎですね。そういうわけで、差額ベッド代のような仕組みで、保険診療と併用してファーストトラック代の徴収も認めたらどうかと思ったりするわけです。誰か改革してくれないかなぁ。

つい長文になりましたが、以上が医療における「待つ」「待たせる」問題とその周辺でした。

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