歯に関する噂でよく耳にするのは

「むし歯になりやすい人は歯周病になりにくい」

というものです。

患者さんからもよく「あれって本当ですか？」と聞かれます。

本当はどうなんでしょうね？

「むし歯」と「歯周病」、「なる」と「ならない」
表にするとこのようになります。こういう表をマトリクス図と呼びます。

そして問題になっているのは

「この黄色の部分にみんなが集中しているのではないか？」ということですよね？

むし歯と歯周病の原因菌を見てみると・・・

そもそも、むし歯も歯周病も感染症の一種ですので、その原因菌を見てみましょう。

むし歯の代表的な原因菌

ミュータンス菌
ラクトバチルス菌

歯周病の代表的な原因菌

ジンジバリス菌
フォーサイセンシス菌
アクチノマイセテムコミタンス菌

それぞれの発病に影響力の強い菌はことごとく食い違っています。
もし、両方に同じ菌が含まれていれば、むし歯と歯周病は連動して起こる、と言えそうですが。
それは「ない」ということです。

「むし歯になりやすい人は歯周病になりにくい」

を否定しない結果です。

むし歯や歯周病が生じる条件を列挙すると・・・

虫歯の場合

・虫歯菌
・食べ物
・歯の質や唾液の量や質
・お口の清潔度

歯周病の場合

・喫煙
・加齢
・ホルモンバランスの崩れ（特に妊娠）
・唾液の量
・免疫の低下
・ストレス
・かみ合わせ
・性生活（歯周病は性感染します）
・お口の清潔度

ということで、お口の清潔度や唾液という共通する項目がありますよね。

これは雲行きが怪しくなってきました。

文献を調べてみました

文献を調べてみますと、まさにこのエントリーの題名を解明するべく調査されてものが見つかりました。

日本大学歯学部での研究です（　「歯周炎とう蝕との関連」日本歯周病学会会誌 50(suppl-spring): 132-132, 2008.）

40名の患者さんを歯周病とむし歯を指標にしてグループ分けして調べてみました。

歯周病の場合

A　歯周ポケット　３mm以下（歯周病無し）　13名

B　歯周ポケット　３mm以上（歯周病有り）　27名

AはBと比べて歯周病菌が少なく、虫歯菌は多い

むし歯の場合

D　虫歯無し　17名

E　むし歯あり　23人

DはEと比べて歯周病が多く虫歯菌が少ない

分かりづらいかもしれないので、さらにかみ砕いて言うとこういうことです。

歯周病にかかってない人はそうじゃない人と比べて歯周病菌は少ないけど虫歯菌が多かった。

むし歯にがかってない人はそうじゃない人と比べて虫歯菌は少ないけど歯周病菌が多かった。

つまり

こういうこと。

結論

むし歯になりやすい人は歯周病になりにくいっていうのは・・・・

本当でした！！

臨床の現場では？

では、臨床の現場の実感はどうかというと「そうかも知れないけど、違うことも多いなぁ」という感じです。

ま、歯医者だったら誰だって知っているのですが、歯科医院には

・口を開けたらプラーク（歯垢）がべったりついていて、歯周病もむし歯もひどい。
・口の中がピカピカにきれいで、むし歯も歯周病も全く見当たらない。中に人が住めそう。
・子どもの頃からむし歯が全くなく、表彰されたこともあったのに、中年期以降歯周病に悩まされている。
・むし歯は多いけど歯肉はきれい。

といった４つのマトリクスそれぞれに所属する人々が普通に来院されます。どこかの区分について「そういや、ほとんど見ないなぁ」ってことはありません。

文献の結果からいうと「そうなってる人が多い」

臨床経験から行くと「そうかも知れないけど、そうじゃない人もかなりいるからあんまり気にしてない」

それはともかく、むし歯も歯周病も両方ならないに越したことはありません。

実はふくしげ歯科に通う患者さんの多くは「むし歯も歯周病もならない」という区分に属しています。

どうしてかというと、うちの患者さんは意識の高い方が多く、長年定期メインテナンスに通院しておられるからです。長期間、定期メインテナンスをしている方は、お口の中はいつもツルピカで、菌そのものの数が少なく、むし歯も歯周病も起こらないのが当たり前という状態なんです。すばらしい～！

(ﾟ∇ﾟﾉﾉ”☆(ﾟ∇ﾟﾉﾉ”☆(ﾟ∇ﾟﾉﾉ”☆ﾊﾟﾁﾊﾟﾁﾊﾟﾁ!!!

この状況は人工的に作り出すことができますので、皆様もぜひ仲間になって下さいネ♪