河内長野市の歯医者・歯科医院 ふくしげ歯科 千代田駅徒歩10分 歯周内科(歯周病治療)

ふくしげ歯科
〒586-0006 大阪府河内長野市松ケ丘中町1290-1
コノミヤ河内長野店 2階

秘技!院内感染防止対策をちゃんとやってる歯科医院の見つけ方(読売滅菌報道シリーズ3/3)

2014.06.28
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読売滅菌報道シリーズの最終回です。「安全な歯科医院にかかりたい」というのはみなさん共通の願いだと思います。そこで、本日はプロ仕様の安全な歯科医院の見つけ方をお教えします。

  知識は力なり!

わたしは歯科医師なので、ある地区で滅菌をちゃんとやっている歯科医院を探そうと思ったら、ネットで5分も調べれば大体のことがわかります。もちろん100%ではありませんが、かなり高い確率でイケてるクリニックを見つけることができます。そして、実際に現地に足を運んで診療室に5分もいればどの程度の滅菌レベルなのかほぼ完全に把握できます。べつに自慢げにいわなくてもプロなんだから当然です。でも患者さんはプロじゃないので、本当にちゃんとやってるかどうかわかりませんよね?これは、食肉のプロが産地偽装を見抜けるのに、一般のお客さんにはちっともわからないのと同じです。プロにはプロのノウハウがある・・・たぶんね

以下2つのエントリーで歯科における院内感染防止対策の現状と問題点について書きましたので、まだの方は合わせてお読み下さい。

第1回 悲報!中国に完敗!日本の歯科の衛生管理
第2回 なぜ7割もの歯科医院で歯削る機器の滅菌が行われないのか?

歯科でシビアな院内感染が起きやすい物 No.1は皆さんの嫌いなあれです

歯科治療において、院内感染が起きやすいのは歯を削る道具です。その中でも特にタービンが要注意です。タービンといえばキーンという音がするあのイヤなやつです。昨日のエントリーでタービンの仕組みをざっと見ていただきましたが、中に小さな風車が仕込まれていて、圧縮空気を風車にぶつけることで回転させています。削り終わった後、回転が止まる瞬間に周囲にある液体がタービンのヘッドの中に逆流します。それをサックバックと呼んでいます。当然血液も逆流します。をして、それを適切な処理をせず、次の患者さんに使用すると、前の患者さんの血液が次の患者さんの口の中に飛び出します。タービンを使用するときは、出血を伴うことが多いので感染の危険性が高いのです。

  前の患者さんの血液を、次の患者さんの傷口に吹き掛けてしまうかも知れない

これがちゃんと処理していないタービンが危険な理由です。

サックバックについてはこちらをご覧下さい。私の知り合いの歯科医師がアップしたものでかなり衝撃的。「うへー」ってなります。

多くの歯科医院では、タービン使用後アルコールに浸した綿で外側をキュキュッと拭いて次の患者さんに使いまわしています。それがどれくらい危ないことかおわかりいただけたことでしょう。ちなみに、このタービンはやや昔の型のもので、新しいタイプのには逆流防止機能がついています。「新しいのは逆流しないから滅菌しなくても大丈夫」と主張する向きもあるのですが、本当にそうでしょうか?

その疑問を解消するために当院で実験してみました。逆流防止機能付きのタービンを色のついた水の中で回して、停止させます。そして、アルコールに浸した綿で表面を消毒して、再度回したところ・・・

回し終わった後、長らくブクブク泡が立っていたと思うのですが、それが逆流防止の一つの方法です。回転が止まった瞬間にドッと逆流してしまうので、しばらくの間空気を送り続けるという作戦です。もう一つの方法は逆流防止弁の設置です。これらのおかげで、確かに逆流はしにくくなりました。(最初の動画と比べて見ればずいぶんましなのが分かります)でも、ご覧の通り全く逆流しないわけじゃないんですよね。

つまり、タービンのような複雑な構造のものは使用後ただ、滅菌器に放り込めばいいのではなく、中に逆流している物をはき出させる、しっかり洗浄する、など滅菌以外の工程も重要なんです。ただ滅菌器を買って適当にやれば良いってもんじゃなく、キチンと勉強して理屈に合った取り組みを行う必要があります。

我々は「歯科ではタービンの滅菌ができれば対策の8割は終わり」という言い方をします。一番病気を媒介しやすいタービンが滅菌されているか否か、患者さんはまずそこに注目すれば良いということなんです。

ウェブサイトを見る

さて、注目ポイントが分かったら、それを元に、まずはWebサイトで調べることから始めましょう。院内感染防止対策を頑張っている歯科医院は「自分の医院はよそとは違うんだ」というプライドを持っていますので、たいていWebサイトに滅菌していることを載せています。その際に気をつけて見ていただきたいのが滅菌器についての記述です。

滅菌器にはたくさん方式があって、タービンの滅菌に適さないものが多いのです。

現在日本で正式に薬事を通して歯科医院に対して販売されている器械に関して、タービンを安全なレベルまで滅菌できるか否かで分けてみました。

タービンの滅菌ができる滅菌器

クラスB滅菌器
クラスS滅菌器の一部

 

タービンの滅菌ができない滅菌器

クラスN滅菌器
(クラスS滅菌器の一部 ←これについては知りません、存在してるのかな?)
プラズマ滅菌器
ガス滅菌器

 

医院のサイトに「歯を削る器具(タービン)を滅菌しています」「当院の滅菌器は●●クラス(または機種名)です」などと具体的に書いてあるところは相当勉強していますので期待が持てます。

ちなみにふくしげ歯科ではクラスSのステイティムという器械を使っています。もちろんキチンと滅菌できる機種です。

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歯科医院でチェックすること

1.歯科医師とスタッフが患者さんごとにグローブを交換しているか
2.治療用の椅子に座ったときにタービンなどがつきっぱなしになっていないか
3.口の中を触ったツバのついた手でその辺をベタベタさわってないか?

患者さんが見て分かることで、この辺がクリアされていれば十分でしょう。特に3をクリアするのは現場力を要するので結構難しいんですよ。

「もし唾液が赤かったら」 スタッフ(場合によっては院長)に対してツバのついた手で引き出しの中をかき回さないように教育するためのビデオです。大昔5,000円で買ったのがYouTubeにありました。これも結構ショッキング映像です。

そっと様子をうかがうのも良いんですが、もっと突っ込むなら、どんなシステムでやっているのか直接聞いてみるのも一つの手です。患者さんの立場からは、なかなか聞きづらいことですが、仲間の先生からの情報では、意外と質問されるみたいです。(ちなみに、うちは初診時に「滅菌やってます」チラシを全患者さんに配っているので質問されません)

安全な歯科医療実現に向けて

このエントリーをお読みの多くの方は「人の命に関わるような、こんなに大事なことなのにどうしてちゃんと指導していないんだ!」とお思いでしょう。実を言うと、ちゃんと安全対策を行うように法律が改定されそれに関する指導もちゃんと行われているのです。しかも、それに関する点数も新設されていたのです。

平成19年4月の医療法改定で患者の安全を確保することが義務づけられ、それに対応して平成20年に「歯科外来診療環境体制加算」という点数が制定されました。当時は点数も低かったので、多くの歯科医師はがっかりしていましたが、滅菌をやっている私たちにとってはカラカラの大地にわずかではありますが慈雨が降ってきたような気持ちでした。そして、2年に1度の保険大改訂のたびにジワジワと点数が上がってきているのです。点数がつけばみんなやる気と勇気がわいてきます。これはゲンキンなようですが事実です。にんげんだもの・・・・ね。そのやる気の源の点数こそが「歯科外来診療環境体制加算」なのです。長いから以後「外来環」と略してお話します。

外来環とは何か?

「外来環」は以下の条件を満たす歯科医院が社会保険事務局に届け出を行うことで、受け取ることができる保険点数です。

・歯科医師が指定された安全対策に関する研修を終了している。
・歯科衛生士が勤務している
・救命救急の器具や薬剤などが常備されている。(AED、血圧計、パルスオキシメーター、生体モニター、酸素、救急蘇生セット)
・口腔外バキュームを設備している。(顔の前でゴーッという音を立る掃除機のような器具。口の中の水を吸引するバキュームではない。)
・器具の滅菌等、院内感染防止対策をしっかり行っている。(歯を削る道具を患者さんごとに滅菌することなど)
・感染症を持った患者さんに対応できる設備とシステムを整備している。

ちなみに平成26年4月の改定では初診時に26点、再診時に4点と定められました。(1点=10円)
この点数はきちんと対策を行った場合に必要なコスト(400円程度)を大幅に下回っています。しかし、今まで1円の評価も受けずに滅菌を頑張ってきた私たちにとっては例え手袋代ぐらいにしかならないとはいえ、やっていることを認めてもらえている。というのが本当に嬉しいのです。

「外来環」申請歯科医院へ行こう!

このように外来環の届け出を提出するには、安全対策の最低限のハードルをクリアしなければなりません。つまり、届け出を行っているということは、その歯科医院は「うちは安全対策ちゃんとやってます」とお上に申し出ているということなのです。お上にわざわざ書類を出しておきながら、実はちゃんとやってない、ということになれば、これは大変なことです。シビアなペナルティを受ける可能性が大きいからです。というわけで、これは結構使える指標なのではないかと考えています。患者さんは外来環をやっている医院のリストを見て、その中から通院先を選ぶと安全である確率が高いと考えられます。

「外来環を申請している歯科医院なんてどうやって調べたら良いのか分からない」という面倒くさがりのあなたに朗報!院内感染防止対策促進協議会という組織のWebサイトで簡単に調べられます。

院内感染防止対策促進協議会Webサイト

安心・安全な歯科医院を見つけたいとお考えの皆さんは、まずはこのウェブサイトでお近くの医院を調べてみて下さい。全国の歯科医院の10%が申請していますので、きっとお近くにもあると思います。どうぞお役立て下さい。

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