河内長野市の歯医者・歯科医院 ふくしげ歯科 千代田駅徒歩5分 歯周内科(歯周病治療)

ふくしげ歯科
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なぜ7割もの歯科医院で歯削る機器の滅菌が行われないのか?(読売滅菌報道シリーズ2/3)

2014.06.27
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なぜ7割もの歯科医院で歯削る機器の滅菌が行われないのか?そこには深いわけがあるのです。聞くも涙、語るも涙の物語です。

読売滅菌報道シリーズ悲報!中国に完敗!日本の歯科の衛生管理 (読売滅菌報道シリーズ1/3)の続きです。あんなこと書くからには、ふくしげ歯科では当然実施しているわけですが、だからといって手放しに「やってないヤツがいる」的に糾弾していい訳じゃないと私は考えています。というのも、歯科で滅菌が広まらないにはちゃんと理由があるからです。

理由その1:歯科治療はとにかく出血が多い

医療の世界には「観血的処置」という言葉があります。いわゆる「外科処置」みたいな血が出る処置のことですね。観血的処置という言葉を大学で初めて聞いたとき、「血を観る」からの連想で、ヤクザ映画の「ごらぁ!おどれナメとったら血ぃみるど!!」が頭に浮かんでしまいましたが、実際はそんな怖いものではありません。

歯科は扱う領域がお口の中ですので、口の中に手を入れた瞬間に唾液という体液が手に付着します。さらに、口の中の粘膜はびっくりするぐらい薄く、特に歯肉に炎症があると、指でそっと触れただけでもすぐに出血します。一日に30名の患者さんが来られると、25名程度は何らかの形で観血的処置になってしまいます。

・にっこり笑って「今日はどうされましたか?」ときく(血が出ない)
・麻酔の注射をする(血が出る)
・歯を抜く(血が出る)
・歯と歯ぐきの境目のむし歯を削る(血が出る)
・歯の中心にあるいわゆる神経と呼ばれる部分まで削ると血管が存在する(血が出る)
・歯石を取る(血が出る)
・歯ブラシで磨く(血が出る)
・デンタルフロスを歯の間に通す(血が出る)
・かぶせ物をくっつけてはみ出したボンドを除去する(血が出る)
・器具で歯の根元をさわる(血が出る)
・歯肉炎の歯ぐきを指でそっと触る(血が出る)

とまあ、もう何をやってもすぐに血が出るわけです。しかも出た血液は唾液と混ざって口中に広がります。血液っていうのは、色々な病気の感染源になりますので、取り扱いに注意が必要であるにもかかわらず、ふと見ると手袋に血がついているなんて毎度のことです。いつも厳重に注意していなければならないわけです。

これを出血少なめの内科に置き換えてみると

内科

・患者さんから病状を聞く(血が出ない)
・血圧を測る(血が出ない)
・聴診器で心臓や呼吸の音を聞く(血が出ない)
・飲み薬の処方箋を出す(血が出ない)
・注射をする(血が出る)

ほとんど血が出ません。出血という意味で歯科と似ているのは、外科の外来、耳鼻科、産婦人科などですね。

血液がつくような処置に使用した器具は、何段階にも及ぶ特別な処理を経て初めて次の患者さんに使える状態に戻ります。患者さんごとにそれを行うので、結構手間が掛かるのです。

理由その2:歯科治療は使用する器具の数がメチャクチャ多い

ほんの20~30分程度の処置であっても、治療内容によっては使用する器具が50個を超えることがざらです。お口の中で、家を建てるようなプチ工事を行うからです。

基本セットという最低限の器具セットだけでもこの数(トレーを入れて9個)です。これに使い捨てのエプロン、コップ、綿、手袋(手袋は1人の患者さんに2~3人が関わりますので、2~3組必要です)を添えます。患者さんが1人、入ってちらっと口の中を見て「大丈夫ですよ」ってことで何もせずに出て行っても、これだけ沢山のものが必要なんです。

 

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理由その3:歯を削る機械は熱に弱い超精密機器であるにもかかわらず高温高圧蒸気で滅菌されちゃう

そもそも歯を削る器具は超精密機器で、直径15㎜程度のヘッド部分にベアリングが入っていて、毎分40万回転という猛スピードで回ります。削るとたいてい血が出るので、毎回高温高圧蒸気で滅菌します。

 

削る道具の頭の部分。直径15㎜程度

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その中身はこうなっていて

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こんな風に動いてるんです。

(ちなみにうちではこのKAVOっていうドイツの会社のを主に使ってます)

こんな精密機械を135度、2.3気圧の蒸気で繰り返し処理するのですから当然いたむわけです。

理由その4:一人の患者さんを迎えて送り出すだけで滅菌コストが数百円かかる

安全の話をするのに、お金の話をするのは違和感があるかも知れませんが、医療においてもコストは重要なファクターです。いくら良いことでも、コストが掛かりすぎると継続できません。

物価連動で見れば、再診料は昔からさほど変わっていないのですが、科学や医療の発達のおかげで、滅菌のシステムが発達しコストがかさむようになってきています。私の滅菌の師匠である生田図南先生が細かく試算したところによると、院内感染防止対策を本気でやると、1人の患者さんを迎えて送り出すコストは400円程度掛かるとのことです。

・滅菌要員として1名余分に雇わなければならない
・使い捨てのものが増える
・器具は交換のため通常の2~3倍の個数揃える必要がある

当院と同等規模の医院が滅菌を真面目にやると、年間500万円ほどのコストが上乗せされることになります。実際にうちで計算してみたら、全くその通りでした。これを毎年受けて立つのは率直に言って非常に大変です。

理由その5:日本の歯科はメチャクチャ沢山の患者さんを診る

日本の歯科医師が海外に行ってまずびっくりすることは、1人のドクターが1日に5~8名しか診ないということです。日本では20~30人が普通で、多い人は50人診るらしい。どうして日本だけそんなにたくさん診るのかというと、日本の歯科治療の治療費は世界の先進国・発展途上国を見渡しても例を見ないぐらい安いからです。日本の保険制度の点数がそう決まっているからで、保険診療をする以上はたくさん診ないとやっていけません。数多く診ると滅菌すべき器具もたくさん出てきます。

日本:安い、気軽に受診できる、バタバタ忙しい、ちゃんと治療できない、滅菌難しい
海外:超高い、治療受けられない人続出、ゆったりちゃんと治療できる、滅菌しっかりできる

どっちも困りますよね。この辺バランスの良い落としどころがあると良いんですけど。

こんな状況なのに現状で滅菌やってる医院って何なの?

というわけで、普通に保険診療を行い、キチンと滅菌すれば確実に赤字転落です。多くの歯科医師は良心と生活の狭間であえいでいるのです。

「でも、ちゃんとやってる所もあるじゃん」と思うでしょう。こんな状況の日本で、ちゃんと滅菌やってる医院にはそれなりの理由があるんです。タイプ分けすると以下のようになります。

1.規模を大きくして効率化し、患者さん一人当たりの滅菌コストを下げる
2.オール自費治療で欧米的にゆったり診療
3.保険診療やりつつ経営努力で突破
4.親が富豪

一番多いのが3.のタイプです。このタイプのやり方で一番有名なのは熊本の生田図南先生のシステムで、ふくしげ歯科もそのやり方で滅菌システムを維持しています。全国にたくさん同じやり方で頑張る仲間の歯科医院があります。だからこそ滅菌に関して本当にやっている医院、ここだったら自分が通っても大丈夫と思える医院を見分けることができるのです。

というわけで、明日は・・・・

秘技!院内感染防止対策をちゃんとやってる歯科医院の見つけ方!(読売滅菌報道シリーズ3/3)

をお送りする予定です。お楽しみに!

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